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登進研バックアップセミナー54・講演内容

Q&A「進級・進学後に起こりがちな問題への対処」

北村洋子2006年6月11日開催の登進研バックアップセミナー54において、第2部で行われた不登校なんでも相談室PART2「Q&A 進級・進学後に起こりがちな問題への対処」の抄録です。

質問は、事前に参加者のみなさまから寄せられたものであり、プライバシー保護のため、地域名・学校名など、個人が特定できるような情報は一部削除したり、質問の内容等を一部変更している場合があります。

Q&Aの回答者・司会者は、以下の方々です。
回答者:海野 千細(八王子市教育委員会学校教育部主幹)
回答者:池亀 良一(代々木カウンセリングセンター所長)
回答者:荒井 裕司(登校拒否の子どもたちの進路を考える研究会代表)
司 会:霜村 麦 (臨床心理士)

Q1 再登校しては、また行けなくなる中3の息子。高校に行っても、また不登校になるのでは、と不安。

現在、中学3年生の男の子です。今まで、新学期や新年度のたびに心機一転、再登校するのですが、1カ月も続かず、再び不登校をくりかえしています。
本人は「中学は捨てて、高校から新しくやり直す」「楽しい高校生活を送りたい」と言っていますが、親としては、また頑張ってつぶれてしまうのではと不安です。
支援体制の整ったサポート校をすすめるのですが、子どもは自分を不登校児とは認めず、普通の生徒たちが通う高校を希望しています。高校へ行って、また不登校にならないような親にできるかかわり方のアドバイスをお願いします。

A1 目標は「不登校にならないように」すること?(回答者:海野千細)

不登校から再登校して、また不登校になって、また行き出して……といった状態をくりかえしているときに、親としては、「また不登校になるんじゃないか」と心配になりますよね。しかし、私たち相談機関の人間は、逆に、不登校になっても、「また再登校するかもしれない」と考えます。元気になって崩れて、また元気になって崩れてという状態が続いたとき、どうしても崩れたときのほうが気になると思いますが、その子をずっと見ていると、たとえ崩れても、この子はある一定の条件が整えば、また頑張ろうと思える力があるんだなということがわかってくるはずです。

1回目の崩れ方と2回目の崩れ方を見比べると、崩れ方そのものも違います。また、崩れたときの自分の受けとめ方、立て直し方も上手になっているはずです。最初の頃は、もう二度と立ち直れないんじゃないかというくらいボロボロに崩れていたのが、2回目、3回目と経験するうちに、「自分を守るために休む」方法を身につけられるようになるからです。そういう意味では、この子が、この子なりに「高校からやり直す」「楽しい高校生活を送りたい」という希望を、ちゃんと親御さんに言葉で伝えられるということは、とても大切な力だろうと思います。

ただ、親御さんとしては、「また同じことをくりかえすんじゃないか」と心配になるかもしれません。しかし、基本的に不登校の問題というのは、「もう絶対に不登校にならないようにしよう」ということを目標にすることは、現実的ではありません。なぜなら、人間は生きているかぎり、必ずつらいことやうまくいかないことにぶつかるからです。ですから、そうなったときに、「不登校にならないように」ではなく、それを受けとめられる力をどうつけていくか。それを目標として設定することを、ご家庭のなかで考えてみたらどうでしょうか。

また、「自分を不登校児とは認めず、普通の生徒たちが通う高校を希望しています」とのことですが、これはよくあるケースです。親御さんとしては、疲れたときに休みやすいとか、なにかあったときに受けとめてもらえる教育環境が整っている学校のほうが子どもにふさわしいと考えていても、本人は「普通の高校で、普通の生徒と一緒に頑張りたい」と思っていたりして、親子間で着地点が見いだせないことがあります。こうした親子間の考え方のズレが起こったときを、私はひとつの大きなチャンスだと思っています。つまり、お子さんとの考え方の違いについて話し合えるような関係がつくれる、いい機会だと思うからです。

この子が「普通の高校でやり直したい」と考えているのは、この子なりにいろいろ考えて出した方向性だと思います。だから、「お前は不登校なんだから、こういう学校に行ったほうがいいんだ」と親の論理を押しつけてしまうと、この子にしてみれば「どうして親は自分の気持ちをわかってくれないんだ」というやりとりになりやすい。ですから、親としては、「こういう点が心配だから、○○のような学校のほうがやっていけそうな気がするんだけど、どうなの?」といった、話し合いができるような関係がつくっていけたらいいなと思います。

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Q2 思うようにならないイライラを母親にぶつける中2の男の子

中学2年の男子です。小6の2学期から卒業まで学校に行かず、中学進学後、6月始めまで登校しましたが、それ以降ずっと休んでおり、担任や友だちが来てくれても会うことを拒否していました。今年の1月から先生だけには会うようになり、中2になって校門まで母親と2回、ひとりで2回、友だちを避けて会わないようにして行ってきました。
いまだに「起きられない」「やる気が出ない」と少し乱暴になり、母親に「どうしたらよいか」と返事を求めますが、答えを出せない私にイライラし、泣きながらぶつかってくる日々です。私のほうも、気持ちがいらだつことがあります。
私が起こしてやったほうがいいのか、声をかけても布団から出てこないときはそのままにしておくほうがいいのか、本人が行動するのを見守るとか、そのままにしておくだけでよいのでしょうか。

A2 毎日見えない敵と闘っている子どもたち(回答者:海野千細)

不登校の子どもは、学校を休んでいてもつらいんですよね。一見、家で好き勝手なことをやって、のうのうと暮らしているように思えますが、たいていの子どもは「学校に行けない自分はダメな人間だ」とか「これでいいのか」と、どこかで自分を責めているし、だからといって行けるかというと行けないし……というジレンマを抱えています。
そうしたイライラを、ついお母さんにぶつけてしまうわけですが、お母さんとしても、なんと言ってあげればいいかわからないし、なかなかうまく受けとめてあげられない。そういうことが毎日くりかえされれば、親のほうだって「いいかげんにしてよ」と言いたくもなります。

一般的に、中1・中2の頃の不登校は、進路の問題もさしせまってないし、本人もまだ先が見えないまま、毎日見えない敵と闘っているような感じで、しんどい状態になりやすいんです。これが中3になると、進路の問題が出てくるので、どう生活を組み立てて、どんな方向を選ぶかといったことが具体的に考えられるようになるんですが、中1・中2だとそういう具体的でわかりやすい課題や目標が見えない。だから時期的にはいちばんつらい頃かもしれません。

そこで、たとえば、「中2になって校門まで、母親と2回、ひとりで2回行ってきました」とありますが、このように、「教室には行けないけれど、こんなことならできそうだ」ということについて、お子さんと話ができるようなら一緒に話し合ってみたらどうでしょうか。
そして、本人の気持ちの折り合いのつくところで実際になにかやってみて、たとえば、ドリルを毎日10ページやってみたら、わりと充実した一日を過ごせたとか、勉強はやる気が出ないけど家事の手伝いをやってみたら、案外上手にできることがわかったとか、その子が家にいることのプラス面を親子間で整理してみる、といったアプローチのしかたもあると思います。

なかには、そういう話し合いもできない、話し合いが成立しないという場合もあるかと思いますが、そういうときは、やはり寄り添うしかないという時期もあるんですね。
あとは、お母さん自身の心の安定をはかるために、お母さんのいらだちを受けとめてもらえる人が見つかるといいですね。それは友人でもいいですし、あるいは相談機関や親の会などを探してみるのもひとつの手かなと思います。

A2 抑えてきた負の感情が一気に吐き出される時期 (回答者:霜村麦)

不登校の子どものなかには、不登校になるまでは「ニコニコ仮面」といって、親を困らせてはいけない、不安にさせてはいけないという思いから、負(マイナス)の感情を出さずに、ギリギリのところで頑張っている子どもがいます。そうした負の感情が、不登校をきっかけに一気に吐き出される場合も多く、それを受けとめるお母さんは大変な思いをすることになります。

一般的に思春期とは、そういった自分のネガティブな感情をコントロールできなくなり、混乱することが多くなる時期です。ただし、それは必ずしも悪いことではなくて、それを受けとめてくれるお母さんがいるからこそ出せる感情であり、そうしたプロセスをうまく乗り越えることで、大人になっていくという、人間の成長に欠かせない時期でもあるわけです。

私の印象では、このお子さんは、そうしたプロセスを経験しながら、少しずつ学校に近づいてきている感じがします。一歩一歩の歩みは小さいかもしれませんが、スモールステップで前に進んでいるので、やがて学校に戻る日も近いのではないでしょうか。

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Q3 2年近く登校していない中3男子。失敗しない高校選びとは?

中3の男子です。中1の6月頃から不登校になり、もう2年近くになります。少しずつ自分らしさを取り戻しつつある気がしますが、まだまだ登校には結びつきません(スキー合宿や修学旅行には参加しました)。こんなタイプの子どもの失敗しない進路とは?

A3 親の価値観で学校選びをしない(回答者:荒井裕司)

学校には行っていなくても、スキー合宿や修学旅行には行けるということですが、そこは、この子にとって生き生きできる場なんだと思います。スキー合宿や修学旅行では、勉強のことや不登校であることは問われなくて済むので、安心して参加できるのでしょう。こうしたことを積み上げていけば、クラスメートにとけ込んでいくチャンスが増えていくはずです。

ご質問の「失敗しない進路とは?」については、なによりも親の価値観で学校選びを絶対にしないこと。学校名や世間体を気にして選ばないということです。不登校の子どもたちは精神的に不安定になりがちですから、不安定になったときのサポートが得られる学校、不安定になっても自分のペースで通えるような学校がふさわしいのではないでしょうか。

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Q4 無理やりでも登校させたほうがいいのか?

中3の女子です。中1の3学期から不登校になりました。 中3の4月、自分から言いだして再登校を始めましたが、最初の3日間頑張って行ってからは週1回くらいのペースになり、5月からはまた休み出しています。5月末の修学旅行にだけは参加し、とても楽しかったと言っていましたが、また休んでいます。 スクールカウンセラーは、やるからには無理やりでも登校させたほうがいいと言っていますが、親としては本人が動き出すのを待ちたいと思っています。無理やり登校させたほうが、これから先のためによいのでしょうか。本人と親とはずいぶん話し合える関係になっていて、進学のこともよく話題にのぼります。

A4 この時期、無理に登校するよりも、余裕をもって高校進学への準備を(回答者:霜村麦)

再登校を始めるのが、ちょっと勇み足というか、スタートが少し早すぎたのかもしれませんね。ただ、お子さんとお母さんの関係がかなりよくなっていて、進学のことも話題にしているということですので、非常に落ち着いたいい状態にあるのかなと思います。
その段階で、スクールカウンセラーが無理やりでも登校させたほうがいいと言う、その理由は何なのかなと思ってしまいます。お母さんは動き出すまで待ちたいと思っていて、そのはざまで、本人の気持ちはどうなのかという部分が抜けているわけですが、お子さんの気持ちに寄り添っているのはお母さんのほうかな、ということが文面から受けとれます。

私の印象としては、もう中3の6月ですから無理に登校しなくても、高校への進学を再スタートの時期と考えていいのではないかと思います。中3のあいだは余裕をもって、その準備を進めていく段階ととらえ、そのなかで余裕がありそうだったら少し学校に行ってみたり、行事に参加したりという感じで十分じゃないでしょうか。お母さんとの会話が十分成立しているわけですから、お母さんがカウンセラーの役割を果たしているのではないかと思います。

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Q5 母親がつきそわないと通学できない高校1年の男の子

高校1年の男の子です。もともとは明るく元気な子だったのですが、アトピーと強迫症状が悪化して、ここ何年か同年代とまったくかかわれず、ひとりでは外に出ることもできない状態でした。
今年の4月からなんとかサポート校に入学し、約1時間、電車に乗って通っていますが、まだ本人が「ひとりでは無理」というので、私(母親)が送り迎えをしています。本人が「もういいよ」と言ってくれればいちばんいいのですが、それがいつなのかわからないので、少しずつ様子を見ながら離していけたらいいなと思っています。
やっとここまで来たという感じなので、振り出しに戻りたくないため、なんとかつきあうつもりではいますが、このままとことんつきあってあげてもいいのでしょうか。

A5 心配しなくても、だんだん母親から離れていく(回答者:荒井裕司)

アトピーというのは、高校1年という思春期にある男の子にとっては、とてもナイーブになるつらい問題です。とくにこの年代の若者は、見た目で判断してストレートな言葉を吐きますから、グサッと胸に突き刺さることもあるはずです。

でも、その学校にどうしても行きたいということで、やっとここまで来たということであれば、お母さんとしては、もう少しつきあってあげたらいいのかなと思います。約1時間かけて電車通学することで、少しずつ社会性もついてきますので、心配しなくても、だんだんとお母さんのもとから離れていこうとするはずです。

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Q6 「勉強に意味を見いだせない」という高校2年の男の子

高校2年の男子。4月から不登校です。不登校傾向は高1の後半から出ていました。現在、「勉強に意味を見いだせない」と言って、授業は受けませんが、部活(水泳)には行っています。5月の後半からは、週に1~2時間程度、授業を受けています。
本人は不登校の理由は3つあると言っていますが、もっとも大事な「理由」については話してくれません。具体的なかかわり方についてアドバイスをお願いします。

A6 まず、子どもが動き出そうとしていることを認めてあげる(回答者:池亀良一)

このお子さんは、まだ学校と完全に関係が切れていない状況にあります。少しですが、まだ学校につながりをもっているわけです。また、この文面から判断すると、親子間の会話も成立しているとみることができます。
このお子さんにとって、部活に行っていることや、週1~2時間は授業も受けていること、こうした学校とのつながりを保とうとしている、あるいは自分から動きはじめつつあることを親御さんが認めてあげることが、とてもプラスになるのではないかと思います。反対に、親御さんのほうから「~してみたら?」とか『学校の勉強の意味は○○だよ」といった正論を諭すようなアクションを起こすことは、マイナスになるでしょう。

お子さんが、動き出そうとしていること、やり始めようとしていることを認めてあげる、理解してあげることに徹すれば、やがてこのお子さんはもう少し動いていくような気がしますし、大事な3つ目の理由についても話してくれるかもしれません。そして、お子さんがやり遂げたことをほめてあげること。こうしたかかわりを続けてほしいと思います。

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Q7 高校1年女子。ギャルサーに夢中で外泊することも…

中2の2学期から不登校が始まり、なんとか附属高校に進学できました。中学3年の先生がそのまま高校の担任になったので、新たなスタートというわけにはいきませんでしたが、なんとか気持ちを切り替えて登校しています。 ところが、ギャルサー(ギャルのサークル)に夢中になってしまい心配です。そのなかで塾に行きはじめるなど、多少前向きな動きも出てきていますが、反面、帰宅が遅く、ときどき外泊することもあります(一応、外泊の連絡はくれますが)。学校との両立もできておらず、この状態をどう受けとめていったらよいか心配は大きくなるばかりです。

A7 やっと見つけた自分の居場所(回答者:海野千細)

このご相談は、おそらく女の子だと思いますので、その前提でお話しします。
どういう経緯で不登校になったのかはわかりませんが、ギャルサーに夢中になっていること自体は、この女の子の精神衛生的には、中学時代と比べてかなり改善していると考えていいのではないでしょうか。興味・関心を同じくする仲間が見つかったことで、きっと支えられているところがあるのでしょう。塾に行きはじめたのも、ギャルサーのなかで自分の居場所を見つけ、友だちとの関係に支えられて、いろんなことに前向きに取り組もうとする気持ちが育ってきているのではないかと考えられます。

とはいえ親としては、帰宅が遅かったり、外泊もしている状態ですから、そこで疲れてしまって学校に行かなくなったらどうしようとか、単位が取れなかったら進学できないんじゃないかとか、また、外泊となると男の子と泊まっているんじゃないかとか、性の問題とか、いろいろ心配なことでしょう。
でも、ここで、「ギャルサーなんかやめなさい」と言ったりすると、それがまたトラブルのタネになってしまいます。こんなときは、親として「あなたのことを心配しているんだ」という気持ちを伝えていくことが大切です。

外泊するときは親御さんに連絡が入るということですから、親子の関係が切れているわけではないと思います。ですから、親として「心配だ」という気持ち、たとえば、「また学校に行かなくなってしまうんじゃないかと心配なの」とか「男の子と一緒に泊まっているんじゃないかと心配なの」という気持ちを伝えていくなかで、本人がようやく居場所として見つけたギャルサークルが、逆にこの子を支えてくれているのかもしれない、という立場でかかわっていったらどうかなと思います。

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Q8 中高一貫校の高1。入学してからずっと登校していない

高校1年の男の子です。私立中学からの持ち上がりで高校へは進学できましたが、入学式、オリエンテーションは参加できたものの、その後、学校へは行っていません。担任からは何回か厳しい口調で電話がきましたが、そのたびに息子はイライラしています。今後の進路のことで悩んでいます。

A8 まずは家庭内で安心して過ごせる環境づくりを(回答者:池亀良一)

私は現在、私立中学校(男子校)のスクールカウンセラーをやっていますが、私立中学では欠席日数が3分の1(年間で60日程度)を超えると進級できません。ですから、この男の子のように4月からずっと登校していない場合には、6月末あたりにそのリミットがやってきます。これについて担任が、「○月○日が欠席日数の限度です」とか、いろいろ厳しいことを言ってくると思いますが、そのことは事務的に本人に伝えておくだけでいいと思います。

こうした電話があるたびにお子さんがイライラするとのことですが、こうなったら親御さんはドーンと腰をすえて、ほかの高校に転入することも考えに入れながら、その子が家庭内で安心してゆったり過ごせるような状況をつくってあげることが先決ではないかと思います。
子どもは、安心して過ごせる状況にならなければ、先のことなどまったく考えられません。いくら進路のことで選択を迫っても、どうしたらいいかわからない状態ですから、ますます本人を追いつめることになります。

その間に親として考えなければいけないことは、今の高校で留年してもやっていくのか、それとも通信制や定時制も含めて他の高校に転入するのか、あるいは高校へは行かずに高校卒業程度認定試験(旧大検)を受けるのかなど、次のステップへの準備としていろいろな情報を集めておくことです。
ここで大切なのは、高校をあせって中退してしまわないこと。次の進路が決まってから、現在の高校をやめるのがポイントです。中退してから他の高校に行くとなると、「転入」ではなく、「編入」することになり、次年度に高校1年生からまたやり直すことになってしまいます。

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Q9 単位不足になりそうだが、ほうっておいても大丈夫?

出席不足で単位が足りなくなりそうです。ほうっておいても大丈夫なのでしょうか。本人がよければ、それでいいのでしょうか。

A9 まだやり直しがきくことを、しっかり子どもに伝える(回答者:荒井裕司)

このお子さんは、単位不足になりそうな状況を、決して大丈夫とは思っていないはずです。さらに言えば、欠席が多くなればなるほどプレッシャーが大きくなってきて、それにつれて不安も大きくなってきているはずです。
ご質問にある「本人がよければ」というのは、おそらく、本人も投げやりな気持ちになっていて、「どうでもいいよ」みたいなことを言ったのだと思います。つまり、本心ではなんとかしたいと思っているけれど、もうどうにもならないと思っている状態かなと思います。

そこで親御さんには、「まだまだ大丈夫だよ。いくらでもやり直しできるチャンスは残されているよ」というアドバイスをしてあげてほしい。
現在の学校には通いたくないのであれば、他の学校や通信制などに転入する道も残されています。休みがちな生徒でも、しっかりサポートして高校を卒業できる選択肢がたくさんあります。あきらめる必要はありません。

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Q10 不登校の原因がわからないので、転学先が決められない

高1です。連休明けから不登校になり、登校刺激をしないで見守っていたら「やっぱりもう学校へは戻らない」と転学の意向を示しはじめました。ただ、不登校の最大の原因を言おうとしません。学力不振(授業についていけない)、校則などが考えられるのですが、最大の事情を言おうとしないので、どのように転学先を決めていいのかわかりません。

A10 原因を言わないのは、言えない理由があるから(回答者:海野千細)

一般的に、なにか問題が起こったときに、原因や理由がわからないと次の対策をどう立てたらいいかわからないと考えがちです。そこで、この親御さんも、いったいなにが嫌だったのか、なにが問題なのかを確かめて、それが解決されそうな転学(転入)先を選びたいと考えておられるのだと思います。

「最大の事情を言おうとしない」とありますので、ご両親からみると、なにかあったんだろうなと思える雰囲気があるんでしょうね。しかし、なにかあったときに、子どもがその原因や理由を言わないのは、「言わない」もしくは「言えない」いきさつがあることが多いんです。
たとえば、男の子で恥ずかしいいじめられ方をされた場合などは、「このことは誰にも言えない」と決断し、口をつぐんでいる場合があります。そんなとき、言わないことを無理に言わせようとすると、そのことを思い出すだけで気持ちのバランスを崩してしまうこともあります。きっとこの子の場合も、なにかつらいこと、気になることがあったんだろうと思います。

ただ、転学(転入)の意向を示しはじめたということは、お子さん自身が「こういう学校に行きたい(かわりたい)」という具体的な希望があるような気がします。
転入先を最終的に選ぶのはお子さんですから、ご両親としては、自分たちが転入先を決めるというよりも、お子さんが転学先を決める手伝いをしてあげるんだと考えるといいのではないでしょうか。そして、「今のあなたが置かれている状況や条件から判断すると、こういう学校なら転入が可能だと思うけど、そのへんはどうなの?」といったかたちで、一緒に考えていこうという立場から、お子さんと話し合いをしてみたらどうでしょう。

つまり、ご両親が「ここなら大丈夫」と一方的に学校(転入先)を決めてしまわないで、いろいろな情報を集めて、お子さんと一緒に考えるスタンスが大切のような気がします。

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Q11 転校先の人間関係にうまくなじめるかが心配

高校入学後、5月の3週目くらいから不登校になりました。今の学校に行くのは無理だと言うので、転校(転入)を考えていますが、すでに出来上がっている人間関係のなかに新しく入っていけるかどうか心配です。

A11 事前に転入先の学校に相談に行くことが大事(回答者:荒井裕司)

この子の場合、中学時代は登校できていたのか、高校に入って初めて不登校になったのかという点がわかりませんが、おそらくギリギリまで頑張って登校していたのではないかという気がします。ただ、いずれにしても、学校をかわることについて本人が前向きであるなら、ぜひその方向で考えてあげてほしい。現在の苦しい状況からぬけだして、新しい学校でやり直すことにすれば、また新たなエネルギーがわいてくると思います。

すでに出来上がっている人間関係のなかに入っていけるかという問題については、事前に転入先の学校に相談に行き、学校全体でサポートしてもらえるようにお願いをしてもいいと思います。担任の先生とも会って話をして、お子さんと友だちになれそうなクラスメートの紹介などもしてくれるように頼んでみましょう。

また、本人が好きな部活などがあったら、先に部活だけでも参加させてもらうといったやり方も考えられます。そうした柔軟な対応をしてくれる学校かどうかも含め、いろいろな転入先の情報を集め、転入の準備を整えてあげたうえで、本人の気持ちも前向きになったとしたら、転校することでよい方向に向かうのではないかと思います。

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進級・進学後に起こりがちな問題について回答者からのアドバイス

心のエネルギーをためるために、親ができること(回答者:池亀良一)

5月の連休明けに初めて不登校になった子どもたちは、受験勉強や進級・進級後の慣れない学校生活でエネルギーを使い果たし、心が疲れきっている状態にあります。車にたとえるならバッテリー切れで、充電しないと動けない状態なのです。

これは、いわば「心のかぜ」をひいた状態ともいえます。ですから、まずは子どもに安心感を与え、心の安静を保つことが不可欠です。安心してゆっくり休める環境のなかで、消耗したエネルギーを補給する必要があるわけです。逆にいえば、周囲から休んでいることを責められたりして、家にいても安心できないような状況であれば、いくら休んでも、心は休まりませんから、エネルギーもたまりません。

こんなとき親としてできることは、「学校に行かなければ」と思っても、行くことができない子どもの状態や気持ちをわかろうとすること。そして、その気持ちを受けとめてあげることです。そのことによって、子どもの心に安心感が生まれ、しだいにエネルギーがたまっていきます。親としては、子どもたちが本来、そういう「回復する力」をもっているということを信じてあげることが大切です。

なお、子どもの気持ちを受けとめることと、わがままをすべて認めることは違います。たとえば、非常に高価な商品を買ってほしいといわれたときには、「うちにはそんな経済的な余裕はないので買うことはできない」ときちんと伝えることが大切です。いちばんいけないのは「学校に行かないやつに、そんなぜいたくなものは買えない」と言ったり、「学校に行くなら買ってあげる」などいう“かけひき”をすることです。親の要求を通すために、子どもの言うことをきくというやり方は、金額の大小にかかわらず、立派な甘やかしになります。

また、親が自分の考えや意見を言うのは必要なことですが、それを無理やり押しつけようとするのは問題です。大切なのは、子ども自身が「親は、自分の気持ちをわかってくれている」と感じることなのです。

高校生のための転入・編入のチェックポイント(回答者:荒井裕司)

1.学校をかえる前に知っておきたいこと
学校をかえるには、「転入」「編入」「再受験」の3つの方法があります。
①転入……今の学年を変えることなく、他の高校に移ること。
②編入……今の学校を退学して学籍を失った生徒が、他の高校の募集で受験し、高校生活を再スタートさせること(退学した学年の最初からやり直す)。
③再受験…あらためて高校の入学試験を受け、第1学年の最初からやり直す。

たとえば、高校2年の途中で退学すると、高校1年の修得単位しかないので、高校2年への編入試験を受けることになります。また、高1で退学した場合は修得単位がないので、編入試験は受けられず、再受験をすることになります。

2.学校をかわると決めたら
①あわてて退学しない
できるだけ「転入」のかたちで移れるように、今の学校に在籍したまま、次の学校を探すことが大切です。その理由としては、「学年が下がってしまう」「同じ学年をあらためて最初からやり直すことになるので費用がよけいにかかる」「1年下の生徒と一緒に学ぶことになるため人間関係がうまくいかない場合も出てくる」の3つがあげられます。
②次の学校の情報を収集する
公立・私立ともに転入は不可能ではありません。ただし、転入の条件として、「一家で学校の近くに転住すること」「帰国子女であること」などをあげる学校もあり、応募者も多いため、現実的にはなかなか厳しいといえます。とくに条件のない学校もわずかにありますが、出席日数や成績などで制約が多い状況にあります。

3.学校選びのポイント①…出席を前提とする学校を選ばない
ひとくちに「不登校」といっても、学校にやや行きにくくなっている生徒、実際に不登校状態にある生徒、ひきこもりに近い状態の生徒など、さまざまな生徒がいます。いずれにせよ、こうした状態にある生徒たちが、新しい学校に入ってすぐ、毎日元気に遅刻も欠席もなく通い続けることができるかどうかは、なかなか難しいものがあります。 出席を前提とする学校は、こうした生徒たちをさらに窮地に追い込みます。できるだけ出席を前提としない学校で、子どもたちに自分のペースを取り戻させてあげることが大事です。

4.学校選びのポイント②…不登校の生徒に配慮した環境や対応
①たとえば、学校に行けない生徒に対しても、親密な関係を保つために、家庭訪問やメール、 電話などで、柔軟に対応してくれるか。
②出席状況が悪くても責めないで、励ましたり、元気を与えてくれたり、自信と信頼を培うような対応をしてくれるか。
③クラスの友人関係や、部活などの人間関係に細かい配慮や対応がなされているか。
④家庭との連携、カウンセリング体制、医療機関等とのネットワークが構築されているか。
⑤学校全体の雰囲気が明るく、安心できる環境がつくられているか。

「よい子」とはなにか?(回答者:霜村麦)

最近、相談を受けていて、よく思うことがあります。それは、「子どもがよい子として育つ」というのは、どういうことなのかということです。
私の考える「よい子」とは、ある程度の年齢になったら自立して、それなりの友人・知人が何人かいて、社会生活が送れるようになっていくことだとイメージしています。そして、子どもたちがその段階に進むためには、その手前でたくさんの「失敗」を経験していく必要があるのではないかと思っています。

ところが、不登校になった子どもたちのなかには、小中学校でそういう「失敗」の経験がない子が少なくありません。ご相談にみえたお母さんからも、「うちの子は、本当になんの問題もないよい子でした」という話をよく聞きます。
実は、他者(あるいは親御さん)からみて「よい子」に育つということと、その子がその子らしく自然に「よい子」に育つということとは、かなり違うことのような気がします。他者からみて「よい子」に育つためには、とにかく失敗をしないことが求められます。不登校の子どもたちを見ていると、小さい頃から失敗が許されない、失敗することを否定されて生きてきた子どもたちなのかなあという気がします。

こういう子どもたちは、不登校をきっかけとして、これまで心の中にため込んできて、おもてに出せなかった「悪い子」の部分、ネガティブな気持ちを少しずつ吐き出すようになることがあります。私たち大人ができることは、そういう怒り、腹立ち、不安といったネガティブな気持ちを、子どもたちがもう少しラクに出していけるようにすること。そして、その子のかたわらで、それを温かく受け入れることが大事だと思います。

長いあいだ、ネガティブな気持ちを押さえつけてきた子どもたちには、不快な感情に対して名前をつけられない子が多いんです。「くやしい」「悲しい」「にくらしい」……これらすべてを「むかつく」「ぶっ殺す」であらわす。でも、それは本当にぶっ殺したいのではなく、それくらい腹が立ったり、くやしい思いをしたということなんです。

でも、それをうまく表現できずに、ずっと心の中にたまっている感情がある。その気持ちを表現する言葉、その子の気持ちにピッタリする言葉を、親御さんとの関係のなかで与えてあげることが、その子を「変える力」になっていくということを、最近、実感しています。
お母さんお父さんには、ぜひそういうかかわり方をしてあげてほしいと思います。

不登校になったからこそ見えてくるものがある(回答者:海野千細)

今日、私がみなさんに伝えたかったことは、問題が起こったことが問題ではないんだということです。不登校にかぎらず、なにか問題が起きたときというのは、本当につらいと思います。
しかし、問題が起きたことによって、今まで気づかなかったこと、見えなかったことが見えるようになる、という大事な側面があります。つまり、問題が起こったことによるマイナス面だけではなく、問題が起こってくれたおかげで、気づいたこと、あらためてわかったことがあり、そういうよい機会を与えられた、という認識ももっていただけたらいいなと思っています。

苦しいさなかに、こんなことを言っても、なにを言っているんだと思われるかもしれません。でも、実際に、不登校の子どもたちの多くが、それを乗り越えたとき、「不登校だったことを後悔していない」と言い、さらには、「不登校を経験したからこそ、今の私がある」と言う子もいます。不登校経験者の生の声をまとめた『「学校に行きたくない」って誰にも言えなかった』という本(当研究会刊)のなかから、こうした子どもたちの言葉をご紹介しましょう。

「私が、もし、あのころちゃんと学校へ行っていたら、今のこの道じゃなくて、昔からあこがれていた道へ進めたかもしれません。でも、不登校をしたことで知り合えた先生や友人、そして、そこで経験したこと、そういうことがあったから、だから、今の私がいると思うんです。あのころをふりかえっていちばん感じるのは、母が私の問題に対して全力投球してくれたこと。私を全身で受けとめて、一緒になって解決しようとしてくれたということです」(中2のときに不登校になり、高校を再受験した女の子)

「不登校を経験しなかったら出会えなかった友だちや恩人がたくさんいます。進路についても、私は今こうして福祉・心理のほうをやっているわけですが、この道も選択しなかったかもしれません。自分で言うのも恥ずかしいんですが、不登校をしたことで他人のことも考えられるようになって、今までの自分よりはやさしくなったかなと思います」(中1から中3にかけての約2年間、不登校だった男の子)

ちなみに後者の男の子は、小さい頃は「いくら記憶をたどっても父親の姿が見えてこない」と言っています。ところが不登校になってから、ある日、父親になぐられたとき、自分に本音でぶつかってきてくれたことに感動し、「その時、初めて父親の存在を意識したように思います。この体験が、父親に頼ってもいいんだなと思うきっかけになりました」と語っています。

このふたりは、不登校になってから、かつて裏切った友人が自分を支えてくれたり、無理解だと思っていた家族の温かさに気づくという体験をしています。親をはじめとするさまざまな人との出会いやふれあいが、子どもたちの心に安心感や信頼感を培い、集団生活へと踏み出す勇気を与えてくれたのです

講演風景

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